サブカル界「ウィズコロナの時代」の憂鬱 避けられない大きなパラダイムシフト

投稿日: 2020年09月05日

 新型コロナウィルスによるダメージから完全に立ち直ってはいないエンタメ業界。特にコンサート、舞台といった、多人数の集客を前提としたライブイベントはいまだに中止、延期が相次いでいる。

 少しずつ有観客のイベントも再開されてはいるが、プロ野球などと同じく、政府のガイドラインで上限は5000人。ソーシャルディスタンスを取ることを考えると、大きなキャパシティーの会場に少数の観客では興行的にペイできない。ある声優の初ワンマンツアーなどは、当初6800円だったチケット料金が、コロナ禍による価格改定で12000円と倍近くなった。有料配信は広く浅く、収容人数を考えずにチケットを売れるというメリットはあるが、やはり現場でライブを楽しむ感覚とは比較にならないし、一握りのトップアーティスト以外はチケットや物販の収入をすべて有料配信でカバーするには至らないだろう。

 そんな中、ブシロードは同社が手がけるメディアミックスコンテンツで、いち早く有観客イベントを復活させた。8月21日~23日、山梨・富士急ハイランドコニファーフォレストでの「BanG Dream! 8th LIVE 夏の野外3DAYS」では、電子チケット+問診表の提出、入場ゲートでの非接触型体温計による検温&サーモグラフィ通過、厚生労働省のコロナ感染者追跡アプリ「COCOA」のインストールを義務付けるなどの対策を行って実施。今月3日から始まった舞台「アサルトリリィ The Fateful Gift」では、検温+手指、衣類のアルコール消毒等を行い、キャストはマウスシールドを着用して舞台に立っている。同社の木谷高明代表取締役会長のメディアミックス戦略は、「アナログとデジタルの融合」。ライブの熱でコアなファンを引きつけ、配信、ゲームなどデジタルコンテンツで幅広い層に訴求するというものだ。どちらが欠けてもコンテンツビジネスは成立しないという木谷氏の確固たる思想が、早期の有観客イベント再開につながっている。

 もちろん、完全な形の再開ができているわけではない。コニファーフォレストは満員で1万8000人程度のキャパだが、その3分の1程度しか観客を入れられない。「アサルトリリィ―」では、会場を約600席のかめありリリアホールから、ソーシャルディスタンスを取るため約1300席の東京建物ブリリアホールに変更した。観客も声出し禁止、レスポンスは拍手のみ。コニファーフォレストにもブリリアホールにも実際に行ったが、ライブではコールで声出し、MIX、推しジャンとかなり“暴れる”タイプのヲタクである自分にとっては正直、ちょっと寂しい感じもあった。

 ブシロード系でも、7月の「Mixchannel Presents D4DJ CONNECT LIVE」は無観客、配信のみ。DJライブは特に会場がスタンディング、観客もタテノリで踊るようなイベントだから、声なし、拍手のみというライブスタイルは難しいだろう。

 再開するライブもあれば、回避するライブもある。「ラブライブ! サンシャイン!!」のAqoursは、5周年記念の5大ドームツアー「ラブライブ!サンシャイン!! Aqours 6th LoveLive! DOME TOUR 2020」を中止した。代替企画として、本来なら東京ドームでライブを開催するはずだった10月10日・11日、無観客有料生配信ライブ「ラブライブ!サンシャイン!! Aqours ONLINE LoveLive! ~LOST WORLD~」を開催する。

 ドームクラスの会場でのライブはサブカル系以外も軒並み中止になっており、再開の見通しは立っていない。方法論はそれぞれだし、ライブをやるのもやらないのもそれぞれの理由はある。どちらがいいとか悪いとかの問題ではないし、それを論じるつもりもないが、コロナ禍の中、「集客で勝負する」イベントほど厳しい状況になっているということは間違いない。現状を見ると、大手コンテンツホルダーをもってしても、まだまだ今後のビジネスモデルについては手探り状態であり、試行錯誤を重ねている段階ということが見てとれる。

 ガイドラインで5000人が上限ということは、それ以下の参加人員でペイできるような興行形態を考えなければならない。むしろ、少人数で数多くのイベントを打った方がいいという考え方も成り立つ。これは、コンテンツビジネスの世界において大きなパラダイムシフトだ。アフターコロナ、ウィズコロナの時代は、今までの成功体験が通用しなくなる。それはビジネスもそうだし、演者側も同じ。「街中でスカウト」なんてことは、どんどんしづらくなっていくだろう。ツイッターやYouTube、TikTokといったSNSや動画投稿サイトから演者が出てくる流れは今まで以上にどんどん加速し、セルフプロデュース力が要求されるようになるのではなかろうかと思ったりもする。

 我々も、今までの常識にとらわれない戦略が必要になってくるだろうと思うけれども、混沌の時代は何かが生み出されるものでもある。それを見届けるのもまた楽しみだ。コロナは確かに早く収束してほしいし、またライブで騒げる世の中が来てほしいが、これまでにない新しい考え、新たな時代を見ることができる、と前向きに考えよう。

 そして今日もまた、おじさんは机に向かい、原稿書きに明け暮れるのであった。全然変わってないやん…ダメだこりゃ(笑)。

◆編集担当N(へんしゅうたんとうえぬ)スポーツ報知記者を経てフリーのサブカル系ライターに。「初音ミク」「魔法少女まどか☆マギカ」「ラブライブ!サンシャイン!!」「BanG Dream!」等の特別号編集に参加。