いまだ電子化されていない名作漫画「ファントム無頼」 名機F-4EJ/EJ改ファントムⅡはもうすぐ退役

投稿日: 2020年11月17日

 滑走路のエンド(末端)付近に立ち、戦闘機の離陸を見送る。晴天の青色、曇天の灰色でもアフターバーナーのオレンジ色は映える。

 ジェットエンジンの轟音。体中で振動を浴びる。耳は数十秒間、難聴に。でも90式戦車の120ミリ滑腔砲発射の衝撃より優しいもんだ。あれは、あばらがきしむ。

 やがて灯油を完全燃焼させたような甘い香りの排気がただよい、麻薬のように脳をとろけさせる。

 この瞬間がたまらない。「これよ、これ」。何が「これ」だか本人も分からんが、満面の笑みが自然と浮かぶ。

 喜びにひたっていると突然、肩をつかまれた。「てっぱちくぅぅん、次は楽しぃ楽しぃ原稿の時間だよぉぉ」。ひいぃぃ編集長!締め切りはもっと先のはずでは!?

 と夢から飛び起きた岡本鉄帽(てっぱち)です。こんな夢を見た理由は分かっています。航空自衛隊の百里基地(茨城県小美玉市)に行きたいんですよぉぉ!

 同基地には、日本最後のF-4EJ/EJ改ファントムⅡ(以下・F-4)を運用する戦闘機部隊・第301飛行隊がいます。

 F-4は、米国が開発した複座(2人乗り)戦闘機。空自は1971年から使用。前席に操縦するパイロット、後席にレーダーなどを操作するナビゲーターが座ります。

 第301飛行隊は、2020年度中に三沢基地(青森県三沢市)に移動し、F-35Aへ機種変更する予定です。つまり、F-4を国内で見られるのは遅くとも20年3月末までなのです。

 百里基地とF-4にこだわるのは、漫画「ファントム無頼」(小学館、原作・史村翔=武論尊、作画・新谷かおる)の影響です。

 この作品は、「週刊少年サンデー増刊号」に1978年~1984年にかけて連載されました。

 主人公は3人。まずは百里基地第305飛行隊所属のパイロット・神田鉄雄2等空尉とナビゲーター・栗原宏美2等空尉。最初、神田はナビの指示を無視する暴走人間、栗原はパイロットを軽視する頭脳派ナビとして登場します。

 さまざまな出来事を経ながら、欠点のある者同士が互いに足りないものを補うように仲を深めていく人間ドラマに魅力を感じます。では、分かりやすい栗原の変化を3段階に分けて見ていただきましょう。

■第1段階〈第2話『好敵手(ライバル)・栗原』〉

 パイロットはナビの人形と言い切る栗原。聡明ですが傲慢な性格がそのまま表れています。

■第2段階〈第32話『さらば、わが友よ』〉

 墜落の危機でも「私は神田の飛びかたに従います!」と相棒に信頼を示す栗原。

■第3段階〈第50話『友情の三連星(トライ・スター)』〉

 別の事故で海に墜落後、陸海空自衛隊のほか米海軍や民間機までにも捜索される栗原。初期の傲慢な性格のままなら誰も助けに来なかったでしょう。

 な、なんてこった。2回も変身するなんて…。栗原は「イナズマン」だったのか!

 そして、もう1人の主人公が2人の乗機、F-4の680号機です。第32話「さらば、わが友よ」で、耐用年数(寿命)の尽きかけた同機のラストフライト中に空中分解を起こし始めます。

 墜落寸前のところで、勝手に脱出装置が作動。神田・栗原の2人は無事に機外へ。血の通わぬはずの680号機との魂と絆を見たワンシーンでした。なお、次話で新品のF-4が届き、新生680号機となります。

 本来、空自の戦闘機パイロットはミッションのたびに乗る機体が割り振られ、専用機を持つことはありません。このリアルを無視して神田・栗原コンビの専用機として680号機を当てた演出は素晴らしいと思います。

 久しぶりに読みたくなったので、自宅の物置から引っ張り出…そうとして挫折。あかん、物多すぎや。よし、電子書籍で手軽に読むか。

 …ない。…ない。どのストアにも「ファントム無頼」の電子書籍が置いてない。おー、ガッデム。

 だとしたら中古市場はえらいことになってるんじゃ…。すげえ、全巻セットで1万円超え。安くても定価超えのプレミア価格になっとる。5~6年前の2、3倍は高いよ。

 これってフリマアプリとかを通じて、出品者と購入者の間をぐるぐる回ってる状態じゃないの?廃棄する人もいるだろうから現存する紙の漫画は次第に数を減らしていく。それに連れて中古価格は高くなる。

 いずれは下がっていくと思うけどね。でも、20年度中はあり得ないと思います。F-4の全機退役を間近に控えて「ファントム熱」が上がっていますので。

 結局、作者や出版社、(電子)取次、書店(ストア)、高値で買っている消費者の利益になってるのかな?

 作品を電子化するコストとかもあるから、世の中の作品全部を電子化してとは言えないけど、少なくとも「ファントム無頼」のチャンスは今よ。

 仕方がない…物置を漁るかぁ~。…おっ、あったあった。足腰痛いなー、寄る年波には勝てんよ。ペラ…。ペラ…。今、開かれる男の世界。ウーン、マンダム。

 まずい…まずいぞ…読み返したら、ますます百里基地に行ってF-4を見たくなってきました。20年度はF-4のラストイヤー。これを逃すと国内では、もう見られません。

 同基地は茨城空港との官民共用空港。JR東京駅などから高速バスが出ており、自動車いらず。

 と思ったら、新型コロナウイルスの影響で、JR水戸駅を結ぶ路線以外は当面の間、全便運休じゃないか!

 うにゅにゅにゅ、おのりぇー新型コロナめぇぇ~。この時ほど貴様を恨んだ時はぬぁぁいぞぉぉ~!

 空港に着けば、最寄りの見学(撮影)スポットまでは徒歩20~30分ほどだというのにぃぃ~。

 作戦の立て直しじゃ!あぁー、こういう時に栗原がいてくれたらなぁー。最適な計画をズバッと出してくれるんだろうなぁー。

 百里には行く。行くぜよ。待っとってくれ、そして飛んでくれ、F-4!

◆岡本 鉄帽(おかもと・てっぱち)66式。どっかの編集兼ライター。艦長はタイラー、隊長は後藤喜一、課長なら佐々木和男が好き。海の公務員を夢見て今は宝鐘の一味。